未来への原点回帰
〜「医療の本質」と「病院の理念」について語りましょう!〜

社会は常に変わります。直近の日本の変化はデフレからインフレへの転換です。医療も社会情勢に大きく影響を受けます。病院の主たる収入にかかる診療報酬制度は硬直化しています。現下、インフレに対応できていません。特に人件費や物価等の高い東京では全国一律の診療報酬制度は経営面においてはマイナスに作用します。その結果、都内病院の多くは赤字経営となっています。いかに経営していくか日々追われています。気が休まることはありません。経営に意識がどうしても向いてしまいます。しかし、このような逆境にあるからこそ医療の本質にもう一度向き合いたいと考えました。

医療介護福祉の現場では「相手のために」とよく言われます。しかし相手のために行動する事は意外と難しいものです。本当に相手のためになっているかどうかはわからないからです。狙いすぎると押し付けがましくなる事はよく経験するところです。特別講演では東京科学大学リベラルアーツ研究教育院 教授 中島岳志先生に利他的な行動についてご講演していただく予定です。日ごろの行動を振り返るきっかけにしていただければ幸いです。

病院は数ある組織の一つです。様々な職種の人が勤めています。様々な考えに基づき行動しています。病院としてよりよい医療を提供するために、その行動を束ねるものが「理念」です。それぞれの病院で理念を掲げています。もう一度、病院の理念に立ち返ります。他の病院の理念に触れることで自分たちの病院の理念の意味が、より意識されることを期待します。

第20回の東京都病院学会を2026年(令和8年)2月22日(日)に開催いたします。これまで様々なテーマで開催されました。今回の主題は「未来への原点回帰」としました。原点回帰は決して過去に戻ることは意味しません。むしろ未来志向でいきます。都内病院は多くの問題を抱えていますが、その問題を直視して、東京の病院がよりよい医療を提供できるように、活発な議論を繰り広げたいと思います。

本学会は都民の健康・医療・福祉に関わりのある方のみならず、多くの方々のご協力なくしてはできないものと考えております。学会開催趣旨にご賛同いただける皆様方の格別のご支援、ご高配を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

第20回東京都病院学会
学会長 土谷 明男